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聖路加国際病院附属クリニック・予防医療センター
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   ノロウイルスによる嘔吐下痢症は,日本で毎年流行し、多くの患者さんが苦しんでいます.中でもご高齢の方やお子様では命の危険がある場合もあり,感染予防が重要です。ノロウイルスの感染源として,牡蠣を始めとした貝類が有名ですが、一見健康に見える方でもノロウイルスを持っている可能性があります。この研究では、人間ドックで使用後廃棄する予定である便潜血の検体を使用し、症状を起こしていないノロウイルスの実態を知るための研究です。この研究により、嘔吐下痢症の感染拡大を防ぐことを目標としています。
 
   本研究では、2017年2月〜2018年2月(状況により変更の可能性あり)に、本院にて人間ドックを受診する一部の方に研究へのご参加をお願いしております。
 
   本研究では、便潜血の検査を受けられた方の、余った検体を使用します。そのため、新たな検査の必要はありません。その便検体を解析し、ノロウイルスがいるかどうか、いる場合はどの様なタイプなのかを調べます。また以下の情報から人間ドックでの結果も、電子カルテより収集し、ノロウイルスとの関連性を検討します。
 
   この研究では、研究説明書及び参加同意書を読み、研究参加に同意いただけた方のみご参加いただきます。参加を希望されない方は、参加同意書を提出されなければ、自動的に不参加となります。
 
   本研究への参加により皆さまに直接の利益はありませんが、本研究のデータは統計的に解析され、日本人の健康増進に役立てられます。また解析結果は、医学学会や論文に発表を行います。なお、個別にノロウイルスをもっていたかどうかは、お答えできませんのでご了承下さい。なお、直接的な不利益はありませんが、個人情報に関しては厳重に保管し漏洩がないよう対応します。
 
   この研究のデータは、個人情報を削除し、個人を特定できないようにしたうえで、聖路加国際病院一般内科、予防医療センターで厳重に保管します。この研究のデータは研究目的以外には使用しません。
 
   研究における利益相反(起こりうる利益の衝突)とは、製薬会社や医療機器メーカーから研究者へ提供される謝金や研究費、株式、知的所有権といった経済活動による研究者や企業の利益と、患者さんの利益が相反(衝突)している、もしくは相反するかもしれないと疑われる状態を指します。この研究は聖路加国際病院及び香川大学の研究費によって実施しており、開示すべき利益相反はありません。
   また、この研究の費用負担を皆さまに求めることはありません。なお、この研究への協力に対して皆さまへの報酬は支払われません。
 
   本邦における感染性胃腸炎の中で、ノロウイルスによる感染は最も頻度が高い疾患です。ノロウイルスによる感染性胃腸炎は、嘔吐・下痢を主症状とし、腹痛及び発熱も伴います(Hall AJ et al. Emerg Infect Dis. 2013)。通常は2−3日で自然軽快する感染性胃腸炎症状ですが、時として4−5日以上続き重症化することもあります。特に5歳未満の小児及び65歳以上の高齢者は、重症化し死亡する危険性が高く、その他の年齢層と比べて死亡の危険度は50倍とされています(Teunis PF et al. J Med Virol. 2008)。その上、最低感染成立ウイルス数は20程度とされており、非常に感染力の強いウイルスであることがわかります(Teunis PF et al. J Med Virol. 2008)。

   厚生労働省の報告によると、本邦における感染性胃腸炎は現在年間100万件を超える報告があり、小児や高齢者を中心として2,500人を超える死者を出しています (厚生労働省. 2014)。近年の報告によると、世界規模では2番目に多い感染症であり、毎年約9,000万人年分の障害調整生命年損失があり、約150万人の患者が死亡しています(Ahmed SM. Lancet Infect Dis. 2014)。中でも、ノロウイルス性感染性胃腸炎は全体のおおよそ20%を占めており、年間死亡者数は約20万人と、非常に重要な感染症です。

   ノロウイルスの感染源として、本邦では二枚貝をはじめとする魚介類が有名です(Shieh Y et al. J Infect Dis.2000)。本邦では魚介類を生食する食文化があるため、厚生労働省より感染予防を注意喚起されています(厚生労働省. 2014)。しかしながら、幅広く魚介類の生食文化が浸透しておりながら、成人における喫食歴からのノロウイルス感染の危険性は、未だ具体的に評価されていません。本邦における食中毒によるノロウイルス性感染性胃腸炎の報告は、年間わずか1万件程度であります。そのため、大部分がヒト‐ヒト間の感染によるものと考えられます。その上、食中毒による感染性胃腸炎による死亡例は近年は全くなく、一方ですべてが集団発生を原因としたその他の原因で起こっています(厚生労働省. 2014)。その根本として、健常者におけるノロウイルスの不顕性感染が報告されており、関与しているとされます。すなわち、感染性胃腸炎の症状を発症していない健常者が、常に腸管内にノロウイルスを保持しており、他人の接触感染することで接触者が症状を発症する経路です。しかしながら、健常者におけるノロウイルス保持の調査は現在までにほとんど報告はなく、本邦でもごく限られた数例の報告があるのみです(林ら.衛生微生物技術協議会報告)。

   本研究では、健常者におけるノロウイルス不顕性感染の大規模調査を行います。人間ドック受診者である健常人の便検体を用いることにより、ノロウイルス不顕性感染の感染率を調査するのみならず、基礎疾患、身体所見及び検査所見とノロウイルス不顕性感染の関係性まで明らかにすることができます。この関係性を用いることで、不顕性感染の可能性を推定します。可能性が高いと考えられる場合は、手指消毒や汚物処理、食品調理の際の衛生状態の徹底を図り、大規模集団感染に発展することを予防することを目標とします。この結果は、本邦のみならず先進国及び発展途上国の両方で、ヒト‐ヒト間のノロウイルス感染予防に適応することが可能と考えられます。
 
小林 大輝 (聖路加国際病院一般内科)

Email : daikoba@luke.ac.jp
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